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【王城編】当て馬王子の侍女に転生していたようです
「……ナ、ちょっと、ティナ!」
「!」
焦りを含んだ呼びかけに、はっと目を覚ます。
視界に飛び込んできたのは、ピンクがかった赤髪をきっちりと結いあげた女の子。
私を見下ろすオレンジブラウンの眼は、目尻がきゅっと釣り上がっていて、どこか勝気な印象だ。
どちらかといえば、その身にまとっている白いヘッドドレスやカフェラテ色のメイド服よりも、大人っぽくスレンダーなドレスが似合いそう。
そんなことを考えていると、彼女はほっとしたような顔を呆れたものに変え、
「だから台座を支えておこうかっていったのに。本当、ティナは過度に遠慮しすぎ」
「……ティ、ナ」
ティナ。そうだ。
私の名前はティナ・ハローズ。
地方の貧乏伯爵家の長女で、十五歳となった昨年から行儀見習いとして、王城で侍女をしている。
間違いない。これまでの記憶も、家族も、家も。
"ティナ"としてちゃんと思い出せる……の、だけども。
さっき見た記憶も、ちゃんと"私"のもの。
(もしかしてさっきのって、前世の記憶だったり……?)
引き寄せた右手には、記憶にあるスマホの代わりに少しくたびれた雑巾が握られている。
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