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柔らかな朝日の下、私は雑踏で舞い上がる前の霧と埃を老舗の靴屋で寸法し仕立てられた特注の靴に纏わりつかせながら足早に御影石や花崗岩でできた古典様式の街並みを通り過ぎた。人々のざわめきが立ち始めた大通りに出ると行き交う乗合馬車に轢かれないように注意しながら職場へゆく一台を見つけて乗り込んだ。先客は中流階級と思われる母と娘の親子連れと眼鏡をかけた会計士らしい神経質そうな壮年の男だった。青い線模様の綿地が貼られただけの壁と座席にしばらく座っていると次に乗り込んだのは、元は白かったと思われる汚れた作業着の青年で、首元にある新緑色の掌大の鱗を隠す様子もなく襟のボタンを開けた風体で私の隣に座り込んだ。親子連れの母の方はさりげなく娘に窓の外の時計塔を見てごらんと促し、娘が好奇心から騒いで乗り込んできた若者の機嫌を損ねないように気をつけた。勤め人の方は頑なに視線を宙に固定させて我関せずを決め込んだ。私は背中を這い回る居心地の悪さをおくびにも出さず次の停車場で降りた。
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