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あの一件の翌日、人に謝ったことがほとんどない俺がついに、昨日は悪かった、ごめんと言ったにもかかわらず、あいつは何も言わずに、ただ愛想笑いを浮かべていただけだった。許してくれないんだな、とつぶやいても、彼は無言のままだった。それから一緒にご飯を食べに行ったけど、ずっとギクシャクとした空気が続いて、全然味がしなかった。
それからも、澤村と俺の付き合いは表面上は続いていった。しかし、それまで俺が誘うと犬のように尻尾を振って喜んで飛んできていた彼が、あの一件以来どこかよそよそしくなって、俺が話している間もどこか違う方向を見ていたり、投げやりな返事をしてくる。誘いを断らないのは相変わらずだが、以前は俺の誘い半分、澤村からの誘い半分という感じだったのが、今では澤村が俺を誘ってくれることはなくなった。
やっとできた男の友人を失ってしまった。
悲しくなった俺は、さらに女性たちにおぼれた。関係はどんどん派手になり、ホテルからそのまま昨日の服で出社する日も増えた。そんな俺を見つめる目線には気づかないふりをした。ーどこか悲しそうな目をして、じっと俺を見ている。本当にそれでいいのかとその目にとがめられている気がした。そんなふうに見つめられることに苦痛を感じた俺は、彼を誘うのをやめた。あの日々のつかの間の友情が嘘のように、俺たちは他人同然の関係に戻っていった。
むしゃくしゃしていた俺はついに、職場の女性にも手を出した。というか、手を出させた。
彼女は俺とそりの合わない上司と付き合っており、彼との関係に嫌気がさしているのだと、会社で2人きりになったとたん、俺にしなだれかかってきた。
正直タイプの女性ではなかったが、嫌いな上司に対する腹いせもあり、俺は彼女をじっと見つめて笑いかけた。俺が慰めてあげますよ、と。
そうして彼女は背徳の恋に溺れて行った。挙句、他の女性たちとは関係を断ってほしいと繰り返し迫ってきた。何度断ってもしつこかった。
そろそろ限界だ、別れたいと言おうかと考えながら、疲れた体をひきずるようにして自宅マンションの前についたときだった。
彼女が俺の部屋の前に立っていた。そして、うつむいたまま石のように固まっている。
「困りますよ。俺はどんな女性に対しても平等でありたいんです。言ったでしょ?」
呆れたようにそう言うと、彼女はゆらり、とその顔を上げた。
俺は思わずその場から飛びのいた。彼女の顔は濃い化粧がすべて涙で流れ落ち、どろどろになっている。血走って充血した目は、彼女の思考が常軌を逸していることを物語っていた。
「慰めてあげるって言ったくせに…好きだって言ったくせに…」
呪詛のように低い声で呟くと、彼女は俺に向かってとびかかってきた。
どこからか、誰かが「危ない!」と叫ぶ声が聞こえて、そこで俺の記憶は途切れた。
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