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気にしなければ害はない。
視えないフリをしていればすぐにどこかへ行くだろう。
部屋が少し冷えてきた所で、汗が冷えてベタベタした体を流したくて脱衣所へ向かう。
キャミソール一枚になった所で、扉をスっと通り抜けた奴が、目の前で立ち止まりじっと視線を向けられるのを感じながら、耐え切れなくて声を荒らげる。
「ちょっと待て!」
しまったと思った時にはもう遅い。
だけど、半透明とは言えやけに普通の人間らしく身だしなみが整っているし、幽霊とは言え若い男に見られるのは羞恥心があるぐらいには、私だってまだ年頃の女だ。
相手に顔を背けながら、パンツ一丁の下半身にバスタオルを巻いて、どうするべきかと考える。
「……僕の事、見えてるんですか?」
柔らかい声が耳元で囁いた。
ちゃんと意思があって、こんなにもはっきりと喋る幽霊は見た事がない。多分、幽霊とは違うなにか。
こうなれば言い逃れは出来ない。仕方ないと溜め息を吐いて相手を見据えた。
「君、もしかして生霊?」
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