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二回目が終わると、オレはシャワーを浴びせられ、服を着せられた。
オレの意識はまだはっきりせず、着せ替え人形よろしく、藤原さんが全ての支度を整えてくれた。
チェックアウトの時間になったと言うので、帰ることになったんだけど、オレは足腰が立たず、膝がガクガクと震えて満足に立つこともできない。
肩と腰を支えられ、息も絶え絶えにタクシーに乗り込む。
やっと帰れる・・・。
そう思って油断したのか、そこで意識が途切れてしまった。
どれくらい眠っていたのか、気がつくと、そこには知らない天井があった。そして横を見ると、藤原さんが寝ていた。
オレはぎょっとなって飛び起きようとした、けど、出来なかった。体が信じられないくらい重かった。特に腰から下に感覚がない。
そして、蘇る記憶・・・。
あぁ・・・やってしまった・・・。
思い出すといっても、二回目からは断片的で、タクシーに乗った後はより不鮮明だった。
でも、でも・・・!
断片的かつ不鮮明であっても、何があったかは分かった。
タクシーでここに連れてこられた後も、やったのだ・・・何度も・・・。
もう無理だって言ってもやめてもらえず、意識が飛びそうになると激しく突かれたり、下肢を握られたりして起こされた。
あぁ・・・そうだ・・・オレ・・・。
最終的には限界を超えた体がもたず、吐いたのだ・・・。
何も食べていなかったので、出てきたものは僅かな胃液だけだったけど、お腹の奥底から沸きあがる吐き気にホント、死ぬかと思った。
さすがの藤原さんもそんなオレの姿に焦って背中を摩ってくれたけど、オレの意識はそこでふつりと途絶え今に至る。
あのあとどうしたんだろう・・・。
体は動かないので手だけで確認すると、オレもベッドもキレイになってる。
藤原さんが拭いてくれたのかな・・・。
横に眠る藤原さんはピクリとも動かず寝ている。
そりゃあれだけやったら、ね・・・。
それにしてもオレ、本当にしちゃったんだ。この人と・・・。まさか男とすることになるなんて、想像もしてなかった。しかも、オレ誘ってなかったか?
突如訪れる賢者タイムに、オレは青くなったり赤くなったりしながら、一人身悶えた。
あんな姿やこんな姿を晒し、あまつさえアソコを見られて欲情するとは・・・!
恥ずかしさに頭をブンブン振っていると、突然腰に腕が回ってきて体を引き寄せられた。
「何をやってるんだ、おまえは」
不機嫌そうな声が降ってきた。
「ご、ごめんなさい。起こしちゃいました・・・ね」
見上げると、眉間に皺を寄せた藤原さんの顔が・・・。
こ、怖い。
「全くだ。綾人のくせに生意気だ」
・・・え?
確かにオレの名前は『綾人』だけど、なんで名前呼び?
頭に疑問符が浮かぶけど、ここは訊かない方がいいと判断した。
それより、早くここから脱しなければ。長居は無用。これ以上状況が悪くならないうちに・・・。でも・・・。
「体が動かないんです。藤原さん・・・」
「和真」
途中で言葉を被せられた。
「え?」
「だから、和真と呼べといっただろ」
呼べ・・・て、藤原さんの名前、和真、て言うんだ。知らなかった・・・いやオレ、『和真さん』て連呼してたような気がする・・・。
また恥ずかしいことを思い出してしまった・・・。
顔が赤くなるのが分かったけど、今はそれどころではない。
「か、和真さん。体が動かないです。責任を・・・」
持って家まで送ってください、という言葉を今度は唇で吸われてしまった。
ひとしきり唇を貪られ、オレの頭はまた蕩けだす。けれど、次の言葉に一気に現実に引き戻された。
「責任は取る。お前はもう、オレのものだ」
はい?
この人、何いってるんだ?
あまりの事に、オレの頭は妙に冴えてしまった。
「・・・あなたには綺麗な彼女がいるじゃないですか」
自分でもびっくりするような冷たい声が出た。
「あれは彼女じゃない。ただのセフレだ」
セフレ?!
「オレも・・・セフレになれって言うことですか?!」
なんだか怒りが込み上げてきた。
なんでオレがセフレに・・・!
「違う。おまえは本命だ」
ほ・・・本命、て恋人ってこと?!
「だとしても、セフレがいるような人とはイヤですっ」
オレ以外の人を抱くなんて有り得ない。
「そう言うと思って、おまえが寝てる間にセフレとは全部手を切った」
全部、て何人いたんだよっ。
「もう、おまえだけだ、綾人」
そう言ってムギュっと抱きしめられたけど、当たってるって硬いものが!
オレはとんでもない絶倫お化けに捕まってしまったらしい。
体が動かないのをいいことに、オレはまたこの人に好き勝手されてしまった・・・。
了
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