プロローグ

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プロローグ

 その時、気が付くと僕は瓦礫の中に倒れていた。ハッとした僕は、さっきの大きな地震を思い出していた。そうか……、あの地震で自宅が崩壊したんだ。僕の身体は脚を挟まれている様で身動きが取れない。そして目の前に顔から血を流した妹の弥生が倒れている。 「お……にい……ちゃん?」  弥生の瞳は小刻みに左右に振れている。 「弥生、大丈夫か?」  僕は弥生の右手を握ってそう尋ねた。彼女が弱々しく首を振る。 「お腹が痛いの……」  彼女の腰の辺りを見ると柱に挟まれていて、赤い血が広がっている。僕は家の中に居る筈の両親に向けて大声を出した。 「父さん! 母さん! 弥生が大変なんだ! 助けてくれ!」  しかし誰も応えてくれない。だんだん弥生の右手が冷たくなっていくのを感じていた。このままでは……。  その時だった。突然、頭上から声が聴こえて来た。 「おーい、聴こえるか?」  それは知らない男性の声だった。でも僕は色めきだった。 「聴こえます! 早く、助けて下さい! 妹が怪我をしているんです!」 「分かった、今、助ける!」  上方でドリルが穴を開けている音がする。そして不意に僕の瞳に太陽の光が飛び込んで来た。その光を中に一人の男性がこちらに近づいて来る。
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