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あれ以来、春田から連絡はない。
祥子も勧誘は断ったが、その後もしつこく勧誘は続いているらしい。
独り暮らしの女性というのは、こういうときに不利なのかもしれない。
祥子は、博子さんに気を遣うあまり強く断れず一人で抱え込みそうになっていた。
唯一この話を共有している僕が、時々祥子へ連絡するようになり、しばらくすると祥子から頻繁に連絡が来るようになった。
あの日から半年、仕事を終えて携帯を見ると春田からメールが届いた。
来週の国政選挙、ある政党に投票して欲しいというメール。
ため息をついてからメールを打ち込む。
春田との関係を断つメッセージ。
文章を作ってもしばらく、送信を押すか悩んだ。
その間、ずっと頭の中では歌が流れていた。
財津和夫『切手のないおくりもの』の5番のフレーズが一曲リピートで。
別れゆくあなたへ
この歌を届けよう
さびしいときに歌ってほしい
遠い空からこの歌を
許せない気持ちと同じくらい、許したい気持ちが同居している。
いや、親友を失うことを恐れているだけかもしれない。
それでも僕は、送信を押した。
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