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届いたメールのこと、春田に会いに行こうと思っていること、全て打ち明けた。
祥子は、僕が会いに行くことを反対し、必死で僕を説得しようとする。
口論になりかけたところで、祥子は部屋から出て行った。
玄関ドアが閉まってしばらくたつが、その向こうに祥子はまだいるような気がしていた。
すると、玄関をノックする音が響き、続いて声がした。
「 手紙、新聞受けに入れるから読んでね。」
カサっと軽い音、続いてピンヒールの足音が遠ざかっていく。
僕は、ゆっくりと立ち上がり新聞受けから手紙を取り出した。
仕事で使っているのか、素っ気ない茶封筒とレポート用紙。
僕は、手紙を読むと一目散に駆け出す。
アパートを出て、駅の方へ。
少し先に、女性の後ろ姿が見える。
大学で最初に恋した女性の後ろ姿。
大学で最初に僕を失恋させた女性の後ろ姿。
何度も僕を失恋させた女性の後ろ姿。
互いに同じことを共有する女性の後ろ姿。
意識していないふりをし続けた女性の後ろ姿。
目の前まで迫った時、その後ろ姿の女性──祥子が振り返る。
一瞬、祥子の目には何かが溢れているのが見えた。
その光るものごと、僕は祥子を胸の中に納めるように抱きしめた。
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