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話し終えた春田は、コーヒーのおかわりを注文する。
すぐに、春田のカップに注がれ、湯気をあげる。
僕はカップに残る既に湯気がたっていないコーヒーを一気に飲み干す。
今度は僕の番。
4年前、人付き合いの苦手な僕に春田は声をかけてくれた。
色んな悩みや愚痴を、嫌な顔をせず聞いてくれた。
面接で、親友について聞かれたとき自信満々に答えることが出来たのは、春田のお陰だと思う。
そんな春田へ、4年間のお礼の気持ちを書いた手紙。
それを渡すのは、女性に愛の告白をするより何倍も恥ずかしい。
カバンから手紙を取り出し、喫茶店のマスターに目で合図を送る。
マスターが無言でステレオを操作すると、BGMがチューリップの『サボテンの花』から財津和夫『切手のないおくりもの』に変わる。
知り合えたあなたに この歌を届けよう
今後よろしくお願いします
名刺代わりにこの歌を
そのメロディが流れるなかで、手紙を渡した。
春田は無言で読み、便箋を丁寧に折り直し封筒に戻しながら顔を上げる。
「ありがとう、なんかジンらしいね。こういうロマンチックなの」
そう言った春田はスッキリとした笑顔をしている。
僕のこういう行動も、素直に受け止めてくれる。
カウンターの向こうで、無言のマスターが一瞬、二ヤリと笑っているのが見えた。
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