【別れ行くあなたへ】

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【別れ行くあなたへ】

卒業し社会人になり、日々があっという間に流れていく。 大学の友達と会う時間を作る気力を消すくらいには、社会は新人にきつい。 週に数回やり取りしていた春田とのメールは、半年後には月に数回になり、一年たつ頃にはほとんど無くなった。 「落ち着いたら飲みに行こう」 そのメールを最後に。 町に桜が咲き誇る季節、就職した一年前を思い出しながら、久しぶりに春田へ連絡しよと思いたった。 そんな矢先、一通の封筒が届いた。 差出人は『春田 友喜』 電話やメールではないこと以上に驚いたのは、その中身。 結婚式の招待状。 驚きと喜びを込めた筆圧で『出席』に丸をして、返信用封筒をポストへ投函。 夜、久しぶりに春田へ電話かけた。 春田は終始照れ笑いしながら、改めて結婚の報告をしてくれた。 お相手の博子さんは、大学の同級生。 4年の秋から付き合い始めたらしいが、僕は全く気付かなかった。 頻繁に失恋しては街行くカップルに嫌悪感を示していた僕に、気を使っていたのだろう。 初夏に結婚式が執り行われ、二人は幸せそうな笑顔に満ちていた。 意外だったのは、大学の仲間で式に呼ばれていたのは、博子さんと特に仲良かった祥子だけ。 式の後、祥子と二人で居酒屋に行った時に聞いたのだが、春田と博子さん、二人が共に同じ宗教の家系らしい。 それを知っているのは大学では、祥子と僕だけ。 そういった経緯もあり、僕らだけが招かれたのだろう。 居酒屋で流れる有線のナツメロ。 チューリップの『青春の影』が流れた瞬間、僕は嬉しくて微笑み、祥子は爆笑した。 カラオケでチューリップ熱唱して振られた事件は、まだ笑える思い出のようだ。
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