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その後、春田と連絡を取ったのは、当たり障りのない年賀状のやり取りを除けば2年後。
久しぶりにメールが届いた。
『久しぶり、良い鮭が手に入ったから石狩鍋でもつつきながら話そう』
嬉しかった。
鮭が手に入ったという理由をつけて誘ってくるのは春田らしい。
春田の家で鍋をつつきながら酒を酌み交わすことを想像して、楽しみになる。
当日、手土産にシュークリームを買い、電車に乗る。
駅に迎えに来てくれた春田との再会で、互いに笑みがこぼれる。
「これ、博子さんへ手土産」
シュークリームの袋を渡したとき、春田の顔が一瞬曇ったように見えた。
駅から10分ほど歩き、アパートの一室へ通される。
中では、知らない男性が鍋の準備をしている。
ここは春田の家ではなく、春田の友人──田中さんの家で、後からもう一人参加して鍋パーティーだと、春田が苦笑する。
一人は遅れるということで、三人で先に始めることになった。
三人で下らない雑談を進めるながら鍋をつつく。
田中さんが、春田の病気のことをどれだけ知っているか分からないので、本当に話したいことも酒が無いことも聞きづらい。
酒もなく、会話の間を食べることで埋めたものだから、すぐ鍋はなくなった。
雑談のネタもとうに切れて話すことも思い付かない。
しばし無言でお茶をすすっていたら、ノックもなしに、遅れていた一人が入ってきた。
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