どうしてこの仕事を？

ええ、ええ、なんでしたかな？

応接室。老人は高級なソファに身を沈めた。向かいに記者が座る。

そう、私は貧乏な家の出でしてな。とにかく腹いっぱいに食いたかった。うまいもん、たらふく食いたかった。その為に金持ちになりたかった。

老人は遠い目をして思いを馳せた。

けれど金を稼ぐ手段というもんを知らんかった。それでも子供心に稼げると思ったんはプロ野球。野球選手は良い。スター選手になれば想像もできん金持ちになれる。
が、ちょっと知恵をつけると、これは駄目だと分かった。野球のプロちゅうもんに成るんは、あの東大よりも狭き門。そん中でスターは一握り。それに何年も現役を続けられん。せいぜい40。