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ごめんなさい、ごめんなさい。
私へ向けた謝罪の声が聞こえてくる。その度に私は、気にしないで、どうにかなるよ。そう慰めるのだけれど、声はか細くなりはすれど、決して消えることはなかった。
☆
「いたいた……あーこちゃんっ」
「……春木さん」
ジャングルジムの上でぼんやりとしていた亜子は、おっとりとした動きでこちらを見やり、
「あ、いいよいいよ、こっちが行くから」
降りてこようとしたのを手で制して、持っていた荷物を胸元で抱え、背中に結び付けるようにして背負った剣とのバランスを確かめながら、勢いよくジャングルジムを駆け上る。
自分の上半身ほどもある大きな刃物の重さに少しふらついたが、亜子の隣に座るまで、一分もかからなかった。
「うわ、すごい……もうてっぺんだ。幼稚園の頃はすごく苦労した気がしたのになー」
「そんな慌ててこなくても良かったのに……スカートなんだから、見えちゃうよ?」
「あはは、気にしないの、どうせ誰も見ないんだから」
言い終えてからすぐに、しまった、と口を抑えるが一足遅く、亜子はこちらに向けていた顔を伏せて、一気に落ち込みモードに入ってしまった。
「ごめんなさい、私のせいで……」
こうなると奮い立たせるのには一苦労だ。今だって、やっとポツポツと話してくれるようになったばかりだというのに。
「もう、それは言わなくていいってばー。やっちゃったものは仕方ない、でしょ? 今はそれより、やることやっちゃわないと」
「ん……やる事って……?」
亜子の疑問に、天真爛漫な笑顔で答えて見せる。
「勿論、ご飯だよ! さっきコンビニで色々手に入れてきたからさ、食べよ?」
亜子に、抱えていた袋を開いて見せつける。パンもおにぎりも、お菓子も飲み物も、すぐに食べられそうなものは一揃い持ってきた。
中身を覗き込んだ亜子が、コクリと小さく唾を飲む。私がおにぎりを一つ取り出せば、真似するようにパンをとり、お互いに顔を見合わせて、やがてどちらともなく、包装を外してかぶりついた。
真上から降り始めたばかりの太陽が照らす、丘の上の公園の中。小さなジャングルジムの上で、私達は少し遅めのお昼ご飯を食べる。
そこから見下ろせる無人の町の方は、見ないようにした。
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