あの星が見たい

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  ☆  私と亜子は、友人というわけではない。亜子とは高校に入って初めて顔を合わせたし、なんなら一年の時は、クラスが違ったうえに、私自身はしゃいでいたのは上辺だけで、実際は周囲に興味を持ったりなんてしてなかったから、クラス替えの時まで存在を認知すらしてなかったりする。多分それは、亜子も同じだ。  今でも覚えている。新しいクラスでの初日、全員が簡単な自己紹介をしていくことになり、 ――○○○○です。趣味は○○と、○○○○すること。好きな食べ物は○○。どうか○○○って呼んでくださいっ  先鋒が気合の入った挨拶をし、周囲がまばらに拍手をする。周りに合わせて適当に拍手をしていた私の席は後半の方で、この様子なら、あんな長い挨拶を進んでやろうとする人達はいなさそうだし、自分に番が回る頃には、ある程度簡素な挨拶に変わっているだろう、とぼんやり考えていた。  そんな若干滑り気味な雰囲気の中で、亜子は次鋒を務めていた。背中まで伸びた髪を後ろで一つに束ねた、眼鏡姿の大人しそうな彼女は、前の生徒が座ると、ゆっくりと立ち上がり、軽く深呼吸をして、 ――浅木亜子、です。よろしくお願いします。趣味は……花と、動物を見ること。好きな食べ物は……ハンバーグです。あだ名は、特にないです。  簡単な言葉。簡素な態度。前の生徒が出したお題を、一つ一つ控えめに、けれど恥ずかしがるでもなく、丁寧に拾う。  誰もが、内気な子がよく頑張った、とでも言いたげに、若干暖かめな拍手をする中、私は座った彼女のことを見つめていた。魅入っていた。  周りに興味はなく、その癖引き受けた事柄は生真面目に果たそうとする、妙な責任感の塊。  彼女の短い言葉と、大人し気な態度は、はた目には正反対であるはずの私と同じ、周囲を見下したような、空虚な気配を、はっきりと放っていた。  もっと彼女のことを知りたい。友達になりたい。誰かを見てそう思ったのは、初めての事だった。と言っても、結局それからチャンスが見出せず、一週間も経ってようやく、剣の前に佇む彼女に、話しかけることが出来たのだけれど。
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