あなたの記憶、お掃除します

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初めまして。突然の書き込み失礼します。 俺には20年共に生きてきた幼馴染がいます。 そいつは病気で、もってあと1ヶ月と言われています。 見舞いに行くとよく昔話をされるのですか、俺は昔っからバカで記憶力が悪く、思い出せないことが多いので、悲しい顔をさせてしまいます。もし本当に蘇らせることができるなら最後にあいつと沢山楽しかった思い出を語り合うために、あいつとの思い出を蘇らせてくれませんか? 俺はすぐにダイレクトメールを送る。冷やかしな場合もあるためそこは慎重に事を進めなければならない。 暫くやり取りをし、信憑性が増したところで、今日夜8時ある喫茶店に来るように連絡した。 「あなたが七瀬さんですか」 「はい。ではあなたがあのサイトの」 「そうです。記憶の掃除屋です」 まぶかに被った帽子を取り挨拶をする。そこから1時間、たわいない話をしながら彼が覚えている限りの記憶を教えてもらう。 幼稚園から同じで中学では同じサッカー部、高校は離れたものの、交友関係は続いていた。そして久々に会おうと連絡を入れたところ入院していることが分かった。高校の頃から入退院を繰り返していたらしい。中々会えないのは部活や受験、サークルなどで忙しいからだと思っていたが、こんな姿を見られたくないと幼馴染は隠し続けていたらしい。 「バカですよね。同級生に聞けばすぐに分かりそうなものの、俺自分のことしか頭になくて」 笑ってはいるが、悔やんでいることが伝わってきた。 「あの、本当に思い出すことはできるのでしょうか? 」 「できる限り尽くします。時間は人それぞれですが、あなたの場合はまだ年齢も若いのでそんなにかからないかと思います」 「そうですか。もし、記憶が戻らなければお金は返して頂けるんですよね」 「そうですね。成功しなければあなたは私の事を覚えているのでお金を返さなければ警察にでも突き出してください」 みんないつも不安そうな顔をする。俺が逆の立場でも同じ顔をするだろう。 人や内容によって値段は違うが、それなりに貰っている。 「では移動しましょうか」 「移動するんですか? 」 「はい。ここではご迷惑になりますので。ここからすぐですから」 そう言って立ち上がり、店を出る。彼は少し離れて後ろからついてきている。 そしてものの数分で目的の場所に着いた。 「守彌(もりや)心療内科、ですか? あなたはもしかしてここの」 「私は院長の息子の守彌(もりや)芽吹(いぶき)と申します。残念ながら医師免許はありません」 「そうですか」 「鍵は開けたままでいいので、そのままこちらへ」 いつも母が使っている椅子に座り、七瀬さんをリクライニングチェアに座らせた。 そして俺は彼に近づき 「何するんですか」 「こうしないとダメなんです、すみませんが我慢を」 おでこを合わせると2人で気絶した。
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