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「第二の人生では何になりたいですか?」
そうだなぁ......子供の頃は何になりたいかと聞かれたらお金持ちやそんなことを考えていたが、今はそんなことは思わない。
ただ......
「ん〜、まあ平凡に暮らしたいですね」
「ふふっ、なんとも無欲な方ですね。とは言っても私が自由に決めることはできないのですがね。これを引いてください」
目の前に出されたのは抽選会などでよく見られるような上の一面だけ穴がある箱だ。
早速手を突っ込んでみた。
だが指先には一枚の紙を触る感覚しかない。
一枚しか紙が感じられないのだ。
「あの、本当にこれは必要でしょうか?この箱に紙は一枚しか入っていないのでは······」
「これは大事なことです。その紙は特殊で、神である私の力が込められており触れた者の運命を決めるのです。ですのでどれを引くかではなく誰が引くかということが重要なのです」
そう言われあまり納得していないが引いてみることにした。
まあ、一枚しかないのなら結果は決まっているのだろう。
箱から手を出せば真っ白な紙が出てくる。
四つ折りで角がピッシリとそろっており、開こうとしても開くことができない。
「その紙は人間には見ることができません。貸してください」
女神様はその紙を見た途端、顔を歪めるでもなく楽しそうにするでもない意味深な顔をした。
俺は結局何になるのだろう......。
「俺は何を引きましたか?」
「そうですね......後で自ら確かめてみるといいでしょう。あなたならきっとこの役割をやり遂げることができるはずです」
話し終えると俺の足元には先ほどとは違う魔法陣が現れた。
「あちらの世界に着き次第、" "と言ってみなさい」
その言葉の後、あたりが光に包まれ眩しくて目を開けていられなかった。
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