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「もちろんよ。でもそこが可愛いでしょ」
「"可愛い"ではなく"カッコいい"でないとダメだ。お前にはいずれ俺の後を継いでもらうから誰もが従いたくなるような見た目でないと」
そうだった......今すぐ魔王なんて放棄して普通の人間になりたい。
同じように耳がとがっていて角があるのだとしたら帽子をかぶれば人間に見えるかな。
「鑑定士には見せたのか?」
「ええ、0歳とは思えないほど能力値が高かったわ」
そうなのか。
これはもしかすると、魔王といえど悠々自適に暮らせるのではないか。
「きっとヘイトはあなたより強くなるわ」
「もちろんだ。この俺の息子なんだからな」
「私の息子でもあるのよ」
そんなやりとりをしながら食事をする。
俺はまだミルクだし話せないんだが......。
こんな賑やかな食事は久しぶりだ。
入社して2年、新入社員にもかかわらず徹夜の日々。
まともに食事を取ったことなんてあまり無かった。
有名な偏差値の高い大学を卒業したのに毎日雑用を押し付けられた。
その結果が死だ。
だからこんな家族での食事は嬉しいものだなぁ。
あまりのことに涙が零れる。
「どうしたのヘイト?」
赤ちゃん言葉では話せないのでただ泣くだけだ。
家庭の暖かさに触れ、感情が抑えきれない。
数分もすれば落ち着いてきてこの身体のせいか、泣いたことで疲れてそのまま眠ってしまった。
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