「もしもの話」

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「もしもの話」

「兄ちゃん見て見て!!スゴイもの見つけちゃった!」 1年間掃除をせず、薄汚れた空気の物置き部屋は、甲高い末妹の声で崩れ落ちそうなほど年期が入っている。エドワードは蜘蛛の巣を手で払いながら叫ぶ。 「何だよマリー。50年前の黄ばんだトランプなんてもう見たくないぞ。」 「そんなことないわっ!もっとスゴイものよ!」 退屈そうに木箱の仕分けをしていたテッドは、おぉっ!?っと顔を上げる。 「なんだなんだ?もしかしてセクシー嬢のヌード写真かー♡」 「お前っていつもそういうこと考えるよな・・・」 鼻を伸ばした弟に呆れながら集結すると、末妹は頬をホクホクさせ、ほらっ!!と透明な瓶を突き出した。 「・・・えっ・・・嘘だろ・・・なぁ兄貴・・・」 「あぁ・・・マリー  これどこで見つけた?」 「そこのトランクに入ってたのよ!」 「今すぐしまえっ」 「え?何で?」 「何でもだ!・・・早くしまえ」 兄の稀に見る厳しい形相に、末妹はヒッ・・・と肩をビクつかせる。 「・・・こういうのは、外に出しちゃいけねーんだ。どこで誰が狙ってくるか、分かったもんじゃねーからなっ。」 「・・・う・・・うん・・・兄ちゃんが・・・そう言うならっっ・・・」 「まぁー待て待て。」 どこか惜しい様子でしまわれそうになった瓶が、一回り大きな手にヒョイと奪われた。 「おいテッド!」 「せっかくマリーが見つけた代物だ。ちょっと一息ついて鑑賞しようぜ。」 「いやでも・・・」 「ここじゃ俺ら以外誰もいないだろ?それに兄貴も気にならないか?」 テッドは瓶の中身をわざとらしく兄に見せつけた。 「一般家庭の物置きに どうしてこんなお宝があるのか  をさ。」
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