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月の光に私は溺れる
もしあんたの側に私が居られたのなら
決してその手を離しやしなかったのに
何度繰り返したって意味のない恨み言
もしあんたの側に私が居られたとしても
あの時の私はきっと何にも出来なかった
判ってる
判ってるの
ほんとうは、
そんなことを考えること自体が
果てしなく無駄だということ位
見上げた夜空にはあんたに似合う細い三日月
澄んだ夜の中で浴びる光はまるで冷たい雨のようで
ましてや、細い三日月が降らす月明かりの日にはね
こんな私だって、泣きたくなるのよ……。
あんたは『らしくないですね』と笑うでしょうけど
ずっと、想っていた
本当はずっと、ずっとあんたは知らなかっただろうけど
もう、あんたが知る術もないけれど
だけど、ひとつだけね
たったひとつだけれど
あんたがいなくなって
良いことがあったのよ
何度忘れようとしてもだめで
(だって、あんたにはもう他の相手がいて)
どうしたら良いか判らなくて
(どうしても、私はあんたしか見れなくて)
途方に暮れていた私だったの
(他の男を、好きになれたら良かったのに)
だけど、もう
忘れようとしなくて良いでしょう?
私がどれだけあんたを想っても
誰も、傷付きやしないもの
あんたが手を伸ばしたその先に
私が居られたらどんなに良かったか
そんなエゴだって、許される
偲ぶ振りをして、私はきっとあんたを想い続けるのよ
何年も、
何十年も。
恐らくは、死の際にですら
あんたに愛される幸せを
私はこの手に感じることは出来なかったけれど
他の女があんたに愛される幸せを感じているのを見るよりは
ずっと、ずっと不幸じゃない
こんな醜い嫉妬はそれこそ
『私らしくない』
だけど、そうさせたのはあんたなんだから
「ねぇ……カナタ」
地獄でも良い
どんな場所だって構わない
どんな場所だって構わないから。
望んでも、虚しくなるだけなのに
「また、あいたい……」
もう、いちど
あんたにあいたい
そうして、そのときはたとえ、かりそめでもいいから
あんたに、だきしめられたい
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