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駅に到着した時、制服は雨でびしょ濡れになり、体は冷たくなっていました。しかし、そこに不快感などはなく、むしろ達成感やそういった類のものを私は感じていました。
「迷惑な雨だなぁ。結局、ずぶ濡れかよ。」
「そうだね。これ、走っても走らなくても変わらなかったんじゃない。」
「おいおい、、せっかくお互い必死で走ったんだ。それは言わないでくれ。」
私たちは、お互いを見て笑い合いました。そして、その笑顔が少し和らいだ後、あなたは言いました。
「さっき言った事、嘘じゃないんだ。」
「え?」
「その、、付き合ってたら良かったのになっていう。」
私の胸は騒つき、また涙が込み上げてきました。しかし、彼が真剣な眼差しで話しているが故に、私もそれを止めまいと溢れそうになる涙を堪えてそれを聞いていました。
「当時、色んな奴にからかわれて、そんなんじゃねえよって強がってたんだ。その時は大人ぶってたつもりだったけど、今思うと逆にガキくさいよな。」
彼の言葉はまるで自分の心を見透かされているようでした。しかし、それはつまり、私たちが同じ想いを抱えてこの数年を過ごしてきたという事を意味していました。彼同様、私もただ強がって自分の気持ちに正直になる事を拒んでいただけなのです。
「卒業してお前に会えなくなるなんて、そんなの嫌なんだ。」
私は堪えきれず、また涙が頬を伝いました。同時に、自身にこびり付いたフィルターがボロボロと剥がれる感覚を覚えました。
「私も会えなくなるのは嫌だよ!たまにはこうやって会って話したりしたいよ!」
ようやく自分の気持ちに対して、面と向かって向き合う事が出来た瞬間でした。
それを聞いたあなたは驚きの表情を見せましたが、私たちが同じ想いだったという事をすぐに理解したのか、その後は安堵の表情に変わりました。
そして、あなたは優しく言いました。
「卒業後もたまには会ってくれるか?」
「もちろん、いいに決まってるじゃん。」
私にこびり付いたフィルターは、もはやどこにもありませんでした。
これ以上、涙が溢れないよう上を見上げると、すっかり雨は止んでおり、キラキラと光る青空の中を鳥が気持ち良さそうに羽を広げて飛んでいる姿が見えました。
(エモ過ぎるだろ。)
私は心の中で呟きました。
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