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第一部
ガガンッと教室の後方で机がぶつかる音がした。そちらを振り向くと、高橋様が茶色がかったストレートヘアを乱しながら机の合間を縫って前方に飛び出した。その姿を追っていると、柳田さんが高橋様の腕に抱きかかえられた。
「柳田? どうしたんだ? おい、柳田っ?」
床に肩膝をついた高橋様に抱きかかえられた柳田さんは、眠れる森の美女さながらに反応を示さない。奇麗な黒い髪が静かに流れている。どうやら気を失ってしまったようだ。なにか持病でもあったのだろうか? 朝礼で倒れてしまう貧血みたいなものだったらいいんだけど……などと思いながら見ていると、高橋様が糸の切れた操り人形みたいになっている柳田さんの腕を自らの肩に回して背負い上げた。教室の中がざわめく中、柳田さんを背負った高橋様はわき目も振らずに足早に外へ出て行った。その光景を見終えたあと、内ポケットからメモ帳とボールペンを取り出し一連のシーンを詳細に文字に書きおこした。
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