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1【苦悩者】
主人公パターン1 【苦悩者】
古今東西のあらゆる物語において、最も一般的であり基本的な主人公のパターンである。自分の現状や周囲の環境、あるいは現生そのものに満足できていなかったり、他者から理不尽な扱いを受けたりしていて、くすぶっているキャラクターである。基本的にはどこか、あるいは明らかに、影のある陰性のキャラクターだ。
例としては、古典なら『源氏物語』の光源氏、『ハムレット』のハムレット、『ファウスト』のファウスト博士、『人間失格』の大庭葉蔵など。
映画なら『バットマンシリーズ』のバットマン、『バックトゥザフューチャー』のマーティー、『天空の城ラピュタ』のパズー、『リトルマーメイド』のアリエル、『ヒックとドラゴン』のヒックなど。
マンガやアニメ、現代小説なら『ガンダムシリーズ』のアムロやカミーユ、『るろうに剣心』の緋村剣心、『ナルト』のうずまきナルト、『ハリーポッターシリーズ』のハリーポッター、『涼宮ハルヒの憂鬱』のキョンなど。
拙作の主人公たちも、全員が多かれ少なかれこの要素を持つ。
また、特定の個人が作り上げた小説でなくとも、ギリシャ神話のヘラクレスや、古事記のヤマトタケルなどもこのパターンである。そもそも基本的に、人は悩む生き物なのであるから、このパターンは人間そのものとも言えるだろう。
前述の『激マン』では「満たされずさまよう者」となっているが、登場時点で「さまよう」という何らかの行動を既に起こしている必要はない。ただしその物語の本筋に入るより前には、既に「満たされない/くすぶっている」という状態になっている必要があるように思う。つまり、このキャラクターを影のあるイメージとして物語上で想定しているのなら、早々に彼をキラキラ輝いていた純粋な時期から、闇の中へと放り込ませなければいけない(例『バットマン・ビギンズ』)。キラキラしていたのが物語中盤近くになってかげり始めるというのは、私は面白い作品で見たことはないと思う。
このキャラクターは通常、(心の中だけか実際の行動かは問わないが)何かを追い求めて、もがき苦しんでいるわけだが、単に「幸せになりたい」とか「何か言えないが満たされない」と漠然と言わせるのは良くない。本当に最初だけなら言わせてもいいかもしれないが、すぐにもっと具体的なものを求めさせるべきである。できれば目に見えて、絵に描いたり触ったりできる物を求めさせるべきである。
例えばディズニーの『塔の上のラプンツェル』では、ラプンツェルは「空飛ぶランタンを見に行きたい」と言うが、その意味は、「自由になりたい」である。ラプンツェルのキャラとストーリーを考え始めた時、制作スタッフは「ラプンツェルの目的は自由を得る事」とまず考えたはずだが、抽象的である「自由」を、具体的に「空飛ぶランタンを見に行く」と変換したところが凄い所で、自分ならこの発想が何年頭をひねって出てくるか……。
大抵の物語では、この主人公は悩みつつも何もできないでいたり、行動を起こしているが成果にも満足できないでいる状態から、序盤に何か「きっかけ」があって、物語が動き出す事になる。
ただし、主人公が元々追い求めていたものと、物語の中で主人公が果たさなければいけない目的は、一致しない場合も多く、この場合は物語の中での目的を果たすうちに、元々追い求めていたものが手に入りました、となる。大抵のキャラクターは愛を求めているし、大抵の物語は敵を倒す事が目的なので、そうなるわけだが、この二つの目的が途中であまり絡まないと、「ああそう、良かったね、チャンチャン」みたいな印象になる気がする。
このパターンの主人公は影があり、ウジウジしがちなので、児童小説や少年マンガ、少女マンガでは、次に述べる【見習い】が採用される事の方が多い。こちらは反対に明るく素直な陽性の主人公パターンである。
また、【苦悩者】は序盤からズバ抜けた能力を持っていることもあれば、少しずつ力を付けることもある。序盤からズバ抜けているがあまり悩まないキャラの場合は、三番目のパターンである【超人】となる。
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