未来からのクリスマス

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未来からのクリスマス

 クリスマスイブの山形の七日町。 サンタクロースがビラを配り、それぞれの店からはクリスマスソングが流れている。大沼の向かいの広場はカップルがたくさんいる。  空からは白い雪が降る。 ホワイトクリスマスというやつだ。恋人を羨ましく見るやつもいる。成瀬はベンチ側に立っていた。クリスマスイブに仕事が休みで七日町に来たもののTULLY'S COFFEEの珈琲を飲みながら煙草を吸うしか予定はない。 「おっと」 俺は知った顔を見つけ喜ぶ。 由季恵も気付いた。 「成瀬、一人なの?クリスマスイブに」 「由季恵だって一人じゃんか」 「私は用事があるの」 「終わったら俺と過ごしてくれない?」 俺は思わす口を出た。由季恵のような可愛いスタイルボンキュッボンが相手にするわけない。 「終わったら、連絡するよ。クリスマスイブとクリスマスを成瀬が素敵な日にしてくれるなら」 「マジ、待ってる」 俺は嬉しかった。由季恵と過ごすクリスマスを最高のものに。  煙草を灰皿につけるだけで積もった雪で火が消える。  「成瀬さん?」 気付かないうちに小さな子供が立っていた。 「誰?」 「お母さんと会ったところから見てたよ。お父さんの分岐点」 お母さん?お父さん? 「クリスマスの日って言ってたから。未来から来たんだ。お父さんに伝える事があって」 俺は戸惑いを隠せない。 子供を見ると明らかに奇抜なファッションで浮いている。未来から?こんな子供がそんな嘘をつくメリットはない。だからといって本当に未来から来たとは信じがたい。どうしよう。  子供は小さな玉を俺に握らせる。瞬間俺は意識が遠退く。  子供が産まれ由季恵が微笑む姿···由季恵と子供と俺の三人が幸せそうに過ごす日々···。 「伝えたいことはここからだよ」 子供の声が聴こえた。  由季恵が車に退かれる映像だった。 その衝撃のあとは子供を虐待する俺の映像··· 泣き叫ぶ俺の映像···  俺は現実に戻る。 子供がいない。消えていた。 玉が手に握られたままだ。 雪がさっきより強く降ってきていた。 未来の映像? 俺は玉をポケットにしまい子供の、未来の息子の気持ちを汲み取った。 必ず変えるよ。 雪を見上げ誓う。 今日はクリスマスイブ。
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