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サンタクロース
仕事が決まらない。
公園の街灯の下のベンチに座る。
ため息が出る。
いつからいたのだろうかベンチに先客がいたのに気付いた。
「大丈夫かね?今日はクリスマスだが」
年配の老人のようだ。
「仕事が決まらなくて」
私は答える。
「仕事かぁ、お子さんにプレゼントにも買えないかね?」
「息子にはサンタクロースはいないと言ってるんです、夢がないけど」
「ホントに、夢がないのぉ」
老人は悲しそうな顔をしたように見えた。
「君も子どもの頃、サンタクロースはいないと?」
老人は言った。
「えぇ、サンタクロースはいないと言われて育ちましたよ」
私は言った。
「理想とは違うがサンタクロースは存在するのに」
老人は立ち上がる。
「どういう意味です?」
私は老人を見る。
髭を生やして黒いスーツを着こなしていた。
スタイルのいい老人だった。
「君に見せてあげよう。丁度時間が空いている」
老人はそう言って私の腕を優しく掴む。
驚く間もなく老人は浮かんだ、私を引いて空に浮かぶ。段々公園が小さくなる。
「私がサンタクロースじゃ」
老人はそう言って私を引いて町を飛ぶ。その間どうやってプレゼントを運ぶのかを語る。つまり空を飛び、サンタクロースたちが各地で仕事をこなす。日本は一番サンタクロースの仕事をしてる人間は少ない。
気付くと公園に突っ立っていた。
辺りを見回すが誰もいない。夢?
私は空を見上げる。老人が手を振り去って行くところだった。
現実だった。
職業としてのサンタクロースは存在していた。
私は空を見上げてサンタ老人が見えなくなるまで見ていた。
何かが違っていた。
翌日突然仕事が決まった。仕事内容は配達。
おかしくも小さな幸せが次々に起きる。
サンタ老人と関係してるのかはわからないけど。夢があるではないか。
そうだろう?
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