1章・魔王と出会う

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『こっちこっち!ここだよ!このドアの先!』 フェルンについていきとうとう着いたみたいだ 心臓がうるさい これからおれは…。 フェルンと最期に出会えてよかった いや!おれは勇者なんだ。最期なんて 思っちゃいけない 『入らないの?もしかして緊張してる?』 おれの顔をのぞき込むようにしてふよふよ浮かんでいる 『まぁ、緊張しない方がおかしいよね! 入らないと始まらないんだし!ほらほら!』 フェルンに背中を押される 小さい割に力強いんだな… 『ほら!僕もついていってやるから!』 フェルン… 「ありがとう。行こう」 おれは覚悟を決めてドアに向かって歩く バクバクと心臓がうるさい ああ、悲観するな 音もなくドアが開く 魔王は…… 部屋の奥、豪華な椅子の上に座っている 黒髪に角が2本生えていてすごく怖い 『魔王様ーー!案内役頑張りました!』 フェルンはビシッ!と敬礼をする フェルンは国王様の命で動いていたのではなく 魔王の命で動いていたのか… そうか。 さぁ、魔王よおれを殺すのだろう 国王様もあの命を下した時点でそれが望みなのだろう それとも国王様は本気でおれが…… それはないか。 「お前が私の妻か?イヤ、生贄とでも呼ぶべきか。」 ? 理解ができない いや頭のどこかでは分かっていたはずだ 勇者と呼ばれながらも訓練をさせられなかったり先手は譲れと言われたり 理解したくなかっただけだ 自然と目から涙が溢れてきた 今までどんな事があっても泣いてこなかったのに 勇者と呼ばれた時も手紙であんなこと言われた時も 実の親に捨てられた時も────── 理解してしまったならもうおしまいだ 「それに、お前の国はよっぽど戦争が好きだと見受けられる」 魔王がなにか喋っているが頭に何も入ってこない なにもかんがえたくない 「仮にも私の妻ともなろうものが従者もつけず 1人で乗り込んでこようとは…ほとほと呆れる はあ、つまらぬフェルン部屋に連れてけ」 『ガッテン承知!ほら行こ!ユウ!』 またフェルんに背を押される あっという間に魔王のいない廊下へ出る 『よかった!ユウが殺されなくて! もしかしたら殺されるんじゃないかーって!ちょっとばかし不安だったんだよ!それより大丈夫?ずっと泣いてるけど……』 魔王のいる所では嗚咽などでなかったのに フェルンと二人になった途端 嗚咽が出てくる 声を出しちゃダメだから頑張って手で押え押し殺す 「…ふっ、ぁ……ああ。」 『泣かないで、どうしたらいいか分かんないよ。 魔王様と結婚できるなんてこれ以上にない幸せだよ?』 ちがう、ちがうの。困らせたいわけじゃ 初めてこんなおれと喋ってくれたのに。 『ううーん。とりあえず部屋行こっかあ』 そういうとフェルンはボンっ!と音をたておっきく…… おっきく?? 「あ!ビックリして涙止まったね!良かった! もしかして僕がおっきくなるわけないと思ってた? 脳内に声を送る位の力があるのにおっきくなれない訳ないでしょ〜!」 おれが泣き止んで安心したのか饒舌になる 「ほら!ユウの部屋行こ! 魔王様から場所は言われてるから案内できるよ!」 おれの部屋? 状況が理解できない おれはここに住むのか? なんて考えていたらあっという間におれの部屋らしき所についた。 どういうことだ……
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