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大きな社やから偉いんか?
そう言われて、シマオは怯んだ。
「なんで真似したらあかんねん! 何が悪いん?
"えびすかき" は自分らの神さんの為にえびす舞いしてるんやろ?
俺だって……俺だって自分の村の神さんのためにやりたいだけや!」
「自分の村の神さんのために……」
シマオは胸元を掴まれ、突き上げられたような気持ちになった。
木偶人形のような物と村人からもらった米や野菜を胸にぎゅっと抱きしめている少年。その表情や言葉の奥にある何かが、自分の奥に苦く刺さっていた。
「……かっこいい思って覚えたんや」
「……え」
シマオは聞き返した。
「 "えびすかき" ……小さい頃から毎年見とった……羨ましかったから必死で覚えたんや。俺だって神さん舞わしたい! キヨメの仕事だけじゃなくて "えびすかき" みたいに、自分とこの神さんを伝えたい思て何が悪いねん……っ!」
少年は目も逸らさず、まっすぐにそう言った。
でもその後、黙ったシマオにまだ何か言いたそうな……少し申し訳なさそうな顔をしたかと思うと、後ずさりしてとうとうその場から走り去った。
「……なんでって……何が悪いって……」
シマオは後を追う事もせず、少年の言葉を小さく繰り返して呟いた。
「偽物の神さん……ちゃうんか。真似してるだけやん……」
「シマオ……」
数馬が後ろから声を掛けた。
「とりあえずうち行こう。村の人らも勘違いして帰ってしもたし……」
「……うん」
シマオの心に少年の言葉が焼き付いた。
大きな社がそんなに偉いんか
俺だって自分の村の神さんのためにやりたいだけや
「……小さい頃から見て覚えたって……」
確かにちゃんと覚えて歌っていた。
少年が走り去った方向を見たまま、シマオは何とも言えず、複雑な切なさを感じていた。
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