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「うーん……」
私は少し考えたが、あまりいい案が浮かばなくてね。なんせ、私は当時、ひらがなを勉強し始めたばかりで、『あ』と『お』の区別がついていなかったんだ。だからどっちがどっちだか、なんとなく予想はついても、明確に判断することができなかったんだ。
「お互いが『ごめんね』って言って、仲直りの握手じゃだめ?」
「それはもうごまんと実践済みですな」
「うーん……それじゃあ……」
考えても考えても、いい案は浮かばない。思いつくことを言ってみても、全部実践ずみだと言われてしまって、次の案を求められてしまう。
そのうちに、だんだん私も飽きてしまってね。
なんせまだ保育園の小さな子どもだ。そんなに集中力は続かない。そんな時、ふとボードゲームがあることを思い出したんだ。
「ねえ、ゲームしない?」
私は一人っ子だから、ボードゲームをするのは親、それもクリスマスとか誕生日とかお祝いで全員が揃った時だけで滅多にできない物だった。それが今日はどうしたことか、私を含め四人もいるではないか。
『な』は当然、「ゲーム? そんなことしてる場合では」と言って渋い顔をしたが。
「でも、一緒に遊べば、仲直りできるかもしれないよ?」
「……なるほど、確かに、一緒に遊ぶと言うことは今までしませんでしたな」
ゲームのある場所はわかっていたので『な』に取って来てもらい、四人で遊ぶことになった。最初は抵抗あった『あ』と『お』だったが、次第に乗り気になってきてね。しまいには全員本気で遊んでいたよ。
数時間は遊んだ頃だろうか。私も疲れて眠くなった頃、『な』が改めて訊いたんだ。
「どうですかな? 何か、仲直りさせるいい案は浮かびましたかな?」
「そうだね……それじゃあ……」
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