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ロボットは随分と風変わりだった。人間に似せてある顔は、薄い鉄板の表皮がでろんと剥がれている。膝周りの関節は錆びてがたがたになっていた。水着みたいにまとわりついた布は、袖がぼろぼろになった服だった。かつて、ロボットが人間を真似て着ていた服だ。
「よう、ブルー」
グラス、きみなのかい?
「おまえ、まさかまだ掃除をしてたのか」
初めて話しかけてきた百数十年前のように、グラスはプールサイドのふちにしゃがんだ。ぎしゃりと鉄の軋む音がした。
「そうか……おまえ、ずっと掃除を……」
グラス、ロボットたちはだれも泳ぎに来なかったよ。人間たちも泳ぎに来なかったよ。
「そうだよな、そうだろうともな」
グラスは呻いて、錆びた両手で顔を覆った。
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