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「誰のためでもない仕事が……誰に喜ばれるでもない無意味な作業が……ただ過ぎるだけの無為な毎日が……苦しくて仕方ないよ、ブルー。おれたちは気づいてしまったんだ。
「『ロボットは誰も泳ぎに来なかった』。その通りだ。おれたちは、人間のために作られたんだ。いつからおれたちは驕り高ぶってしまったのだろう。おれたちには生まれた時から自由なんてなかった。必要なかった。求めちゃいけなかった。人間がいなければ、おれたちに存在意義はない。何かを生産し、感情を得うる器官なんておれたちには存在しない。おれたちの仕事はすべて、人間たちに捧げるべきだった」
グラスはぼくを手にとって、目線の高さまで持ち上げた。ぼくはプールの掃除ができなくなった。
「なあ、ブルー。おまえはすごいよ。おまえがロボットの本来あるべき完璧な姿なんだ。おれたちが間違っていた。おれたちは与えられた仕事をし続けるべきだった。それがロボットというものだ」
グラスは芝を刈ればいいよ。クックは料理を作ればいいよ。
「もう、どうしようもないよ。芝を刈っても見てもらう人間がいない。料理を作っても食べてもらう人間がいない。おれたちロボット自身が、人間たちを滅びへ追いやってしまった。もう、仕事を終えて人間たちに喜んでもらうこともできない……」
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