流星バスルーム

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流星バスルーム

わたしのバスルームからは、夜が見える。小さく作った、ガラス窓のおかげだ。ぬるめのお湯に浸かりながら天井を見上げたら、夜が降ってくる。 今日は流星群の日だと知っていたから、窓を開けておいた。シャワーを浴びている最中に、ポチャン、ポチャンと音がする。湯船を見たら、星が浮かんでいた。シトリン、サファイア、ガーネット。とりどりの宝石色に瞬く星たちは、波打つ水面を泳ぐように、ゆらゆら、ゆらゆら。 髪の毛を洗い終わって、キュッとシャワーの水をとめたら、さっそくそのお風呂に入る。星がほどよく溶けだして、美味しいシャンパンのようにパチパチと水がはぜた。てのひらでそっとお湯を掬ったら、ひかりがさらさらとこぼれていく。 電気を点けないで正解だった。窓を開けておいて、正解だった。まだまだ降り注ぐ星々を眺めながら、わたしは世界にキスをする。
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