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「おはようございます、ハウザー様。レナ様はもうすぐ参ります」
サーヤが一礼すると、部屋の中から声がした。
サーヤは扉を開けて頭を下げた。手は腰あたりで重ねている。
「徹夜明けなのに、朝からありがとう、カイ。これからが本番よ。よろしくね」
髪をアップにしてまとめ上げ、髪に白い生花の髪飾りを付けたレナが部屋から出てきた。昨日の姿よりも少し大人びて見える。赤いドレスがよく似合っていた。
「おはようございます、殿下。ようやく護衛らしい任務、よろしくお願いします」
胸に左の掌をあてて軽く頭を傾けたカイは、徹夜明けだというのに疲れが見えない。
「皮肉まで丁寧にありがとう。どうぞよろしくね」
レナは動じずにっこり笑うと、カイの斜め後ろを付いて歩いた。応接室までそのまま歩くと、カイが扉を開け、レナを案内する。
「さすが、初めての城内にも関わらず、スマートな案内ね」
通り過ぎざまに小さな声でレナはカイを褒めて、応接室の先客に目をやった。
「本日は、わざわざこちらまで足をお運びいただき、感謝申し上げます」
レナは先客に軽く会釈をしてカイの引いた椅子に腰掛ける。
「本日はお招きいただきありがとうございます。ルリアーナの宝石と呼び声の高いレナ王女。さすが、とてもお美しい」
相手は、国内の有力貴族でレナも良く知る侯爵の息子だった。レナは父親をよく知っているので、親に似ていないかと顔のパーツの共通点を思わず探してしまった。
「どうもありがとうございます。少しの時間ですが、よろしくお願いしますね」
2人は暫く会話を続けた。
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