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このままこんなカオス空間に居たら俺までおかしくなっちゃいそう。早々にこの場に見切りをつけた俺は、そっと抜け出して壇ノ浦先輩にお昼を届けに行くことにした。
壇ノ浦先輩の行き倒れ事件後から始まったこの恒例行事は今も続いている。壇ノ浦先輩も俺の作る弁当を美味しいと言って食べてくれるので俺的にもなかなか満更でもない。
無地の紺色の風呂敷で包まれたシンプルな弁当を持って、そんでもってぼっち飯でもしようかと自分の弁当も手に取って、そっと混沌とした輪の中を抜け出す。
途中でそこら辺にいた同じクラスのチワワ(楓くん)に「僕は今から風紀いいんちょーのとこに行くのであの馬鹿どもには伝えないでください。よろしく頼んだぞー」と声をかけ、そのままクラスを後にした。
『風紀のテントってどこだ……』
恭「何かお探しっスか?」
『あっ!恭弥先輩!』
恭「今日ははじめましてっスね!」
読者の皆さんは覚えているだろうか。この方は何を隠そう三国恭弥先輩。あの壇ノ浦委員長の補佐を務める風紀副委員長様です。初遭遇時以降本編には一切出てこなかったが、俺はと言えば週3で委員長に弁当を届けていた為それなりに可愛がってもらえている。役得役得。
『あ、ところで風紀のテントってどこにあります?』
恭「後ろにあるッスよ?」
『いや小屋』
え?なにこれコテージ?なんか知らん建造物増えてるなと思ったけどもしかしてこれ体育祭用に建てたやつ?アホなん?
恭「グラウンドに面した2部屋がそれぞれ風紀と生徒会、奥が保健室で他は軽い水周りとキッチンがあるっス」
『至れり尽くせりかよ』
許せねーよな!俺たちはこの炎天下の中パイプ椅子に座らされてるっつーのに!
俺は自分のクラスのトンデモ空間を思い出し、そっとこの小屋で昼を食わせてもらうことに決めた。
弁当持ってきててよかったー。
『そういえば委員長とか恭弥先輩って何の種目出てたんすか?なんか全然見ねーなーって思って』
恭「風紀の学校行事は基本的に見回りッスよ、盛り上げは生徒会が担当してくれるそうなんで」
『ゑ、体育際見回りで終わるとか地獄か?』
なんてことだ、可哀想にも程がある。
俺上に抗議してきちゃおっかな、てか生徒会盛り上げとか言って遊びたいだけやんな絶対。はっ倒すぞ。
恭弥先輩の後を着いてコテージに上がると中は思ったより広く、共有スペースには恐らく生徒会の双子のものであろうよく分からない悪戯グッズが散らばっていた。
そこをスルーして少し狭めの廊下を突き当たりまで行くと風紀と書かれたプレートのある扉の前に着いた。
恭「本日の風紀室はここッス!オレはまた今から見回り行かなきゃなんスけど、優也くんはここでゆっくりしてってください」
『俺ここで飯食ってってもいいですか?』
恭「委員長から許可降りればOKッス!まぁ優也くんの頼みあの人が断ることなんてないと思うっスけどね」
なーんでどうして俺がこんなに信頼されてんだかわかんないが飯の力って偉大なんだろうな。3大欲求だしな。と思いながらお仕事に向かう恭弥先輩の背中を見送って本日限定風紀室のドアノブに手をかけた。
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