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子供の頃の話だ。
俺の素顔は黒髪黒目ではなく、本当は日本人ではまず見ないような白髪に透き通った青色の目だ。
しかも目に関しては、光に当たると透明になるというおまけ付き。アルビノであった母の影響をそのまま受け継いだ見た目だ。
まぁ要するに、『普通』であれば有り得ないのだ。
それ故に俺は、虐められていた。俺は人一倍耳が良かった。聖徳太子は10人の言葉を同時に聞けただなんて言ったけど、あれは実際有り得ることだ。なんなら俺は、もっと沢山の声が聞こえてくる。
だから、聞きたくなくても
「何あの髪の毛、気持ち悪い。」
「あの子の目、今透けたわよ。人間じゃないみたい。」
「きっと呪われてるのよ、近づいちゃダメ。」
だなんて言う声が聞こえてくる。
ただでさえたくさんの情報で頭が痛くなると言うのに、それが罵詈雑言であるというのなら余計に耳を塞ぎたくなる。
そんな俺に、涼は
「その目と髪の毛、凄く綺麗だ!!宝石みたい。なぁ、その目って光に当たると透明に見えるんだろ??わ、ほんとだ!!すっげえ綺麗!!」
と声を掛けてくれた。たとえお世辞だったとしても、それがどれだけ俺の救いになったことか。
それ以降俺は、1人の時と涼と2人きりの時以外はイヤホンを外せなくなった。
音楽を流していなくても、イヤホンをしていれば気休めくらいにはなる。
今は変装をしているから見た目に大して何かを言われることは無いと分かっている。でも、それでもイヤホンを外すとあの時の光景がフラッシュバックするんだ。
人間は声から忘れるという話は、果たして本当だろうか。なぜなら俺は、あの時の俺を蔑むような声が今でも頭にこびりついて離れない。
この事情を知っているのは涼だけだ。
いつかイヤホンを外せる日が来るように祈って、今日も俺は授業をサボる(大嘘)(チキンだからサボれない)
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