季節外れの転校生

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食堂に着いた。久しぶりに来たが、ほんっとにデカイなこの扉。 涼「耳塞いどけよー」 『イヤホンしてんだから今更だろ』 涼「ま、それもそうだな」 扉を開けた瞬間、 「きゃーーーー!!!!!」 「涼様ーーーーーーーー!!!!」 「今日もお美しいです!!!!!」 「抱いてください!!!!!!!!」 ほら、これだよこれ。だから食堂は嫌いなんだ。 俺の幼なじみ兼親友の涼は、率直に言うと顔がいい。故に、ファンも多くいるのだ。 最初のうちはなんであんな平凡と一緒に居るんだと言われていたが、俺の良くも悪くもない外見のおかげかいつしかそんな声は聞こえなくなっていた。 辺りを見渡し、目立ちにくく、それで居て全体を見渡せる一番端の席へ涼の手を引き連れていく。 『涼、あそこ座ろうぜ』 涼「目立ちにくいけど全体を見渡せる一番端の席ってとこかな?」 読心術でも習わされてんの? 『そんなとこ』 涼「いいよ、座ろうか」 とりあえず席を取り、注文をしに行く。 涼の家は少しばかり名の知れた家らしいが、俺の家はThe,平凡と言ったところだ。 こんな高ぇ学食なんて平凡学生のお財布では到底買えない。 『な、なぁ涼……』 俺は涼の袖をくいっと引っ張り涼を見上げる。 因みに、俺は170cm。涼は182cmだ。 誰だ、俺の身長を170で止めた奴は。 涼「ッッッ…、、なんだ??」 今、心做しか涼の顔が少し赤くなったような?いや、気のせいか。気のせいって言え。誰も何も言うな。(1秒で矛盾) 『その、学食奢ってくれないかなぁみたいな……??ダメ、ですかね……???』 目を潤ませ眉を下げて涼にお願いする。 俺は涼が俺のこの顔に弱いことを知っている。極々平凡な顔なのに、不思議だよな。 涼「あぁもう、仕方ねえな。優也の頼みなら買ってやるよ。」 『っしゃ、涼大好き、愛してる』 涼「ッッッ……」 またまた涼は顔を赤らめる。こいつ、褒められるのには慣れてるはずなんだけどな…… 学食のお兄さんからAランチを受け取り、 『あざます、いつもお疲れ様です』 と一言言う。すると、学食のお兄さんは少し照れくさそうに微笑み返してくれた。 『俺もあんな風に綺麗に笑えたらいいんすけどね』 涼「優也の笑顔は充分綺麗だと思うぞ」 『なわけないが?』 涼と会話をしながら席に着き、早速ゲームを開く。 涼「お前今から飯なのにゲームするのかよ」 『悪いかよ、今イベント中だろって』 涼「まぁそうなんだけどさ」 ホーム画面に居る推しを眺め、つい頬が緩む。ポーカーフェイスが崩れることなんて気にしない。推しの前ではそんなもの通用しない。アイドル育成ゲームの俺の推しくんです。マジ可愛い 『くっそ、なんでこんな可愛いんだ……!』 あまりの可愛さに震えが止まらない。そんな俺を見て涼が心底愛おしそうに笑った。 だがしかし周りなんてもう気にならないくらいには推しが可愛い。 だから、周りの生徒達の半数(ほぼチワワ)が前屈みになってトイレへ駆けて行ったことなんて俺は気付かなかった。そのせいであんなことになるなんて、誰が予測出来ただろう。 食堂の重い扉が開く音がする。 「きゃああああああああ!!!!!!」 「生徒会!!!!!生徒会よ!!!!!!!」 「会長抱いてくださーーーーーい!!!!!」 「副会長抱かせてーーーーー!!!!」 お、やっと来たかよ。 生徒会のお出ましだ。
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