524人が本棚に入れています
本棚に追加
「見つけた! ルーシェン!」
今日の大事な任務は俺にしかできない。それは空から影食いを探すことだ。影食いは地中に隠れているため見つけるのが困難な危険度の高い魔物だ。味方の被害を最小にするには俺が探すのが早い。
国境付近の森の中に真っ黒い影が見えた。黒い円形をしている。大きい。以前無人の集落で飛竜を食べたあいつだ。
ちなみに集落に住んでいた人たちには森に墜落した浮島を立て直して提供した。けっこう喜ばれているらしい。俺とルーシェンの部屋は観光名所になっているという話だ。ジャージとか置いてあるんだけど、無駄に奉られていて取りに行けない。
影食いはゆっくりと移動して、荒地の方へ進んでいる。おそらく飛竜の気配を魔力で察知して食べに来たのだろう。影食いは大きくなるほど大型の餌を狙うようになる。
「どこにいる!?」
「森から出て来た! 今はあの三つ並んだ岩の柱の近くだ。大きさは飛竜を十頭並べたくらい」
「分かった! 飛行部隊は攻撃体制をとれ! シュウヘイは上空で待機だ」
俺以外の飛行部隊の隊員がいっせいに高度を落とし、魔法を唱えて見えない影食いに接近する。アークさんが魔法の込められた矢をつがえて地面を射ると、土の中から巨大な口が現れた。
***
巨大な影食い一頭と、生き残りの中型の魔物二頭を倒し、魔物の亡骸に生え始めた妖花の芽を数えきれないほど焼いて、今回の任務は無事終了した。
荒地のテントで地平線を眺めながらみんなと食事をしたり野営をするのは楽しい。一度幽体離脱した時にお邪魔したけど、生身で参加できるとは思ってもいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!