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『同じ奴隷のよしみで、私も何かしたいです。魔力はないですけど』
そう言うと、ルーシェンは少し悲しそうな顔をした。
「シュウヘイは奴隷じゃない。俺の婚約者で、宝物だ」
『え?』
聞こえたけど、ストレートな言葉が胸に刺さって思わず間抜けな返事をしてしまう。
「何かあったら俺は正気ではいられない」
俺の胸に顔を埋めてそう言ったルーシェンの髪をそっと撫でてみる。
俺は自分の傷には無頓着だけど、ルーシェンはそうじゃない。多分俺より傷ついているのかも。俺はもっと……ルーシェンのために自分を大切にしないといけないんだ。やっぱり王妃様に弟子入りして強くなろう。
『ルーシェン、元気出してください。私はルーシェンが思うより強いです。傷跡はありますが、痛みは大したこと無かったです。その証拠に、緑水湖も泳いだし王宮も登れました』
ルーシェンが顔を上げて、今度はあきれた表情で俺を見る。
「二度と王宮の壁は登るな。まったく……シュウヘイはまるで分かっていない。そんな所が心配なんだ」
ブツブツ言うルーシェンを黙らせるべく、頬に手を添えて引き寄せキスをしてやった。
従者が近くにいようと関係ない。ちょっと恥ずかしくても、それでルーシェンが元気になるなら。
音を立ててキスすると、スイッチが入ったのかルーシェンに押し倒されて深く口づけされた。
衝撃で机から巻物が落ち、二人して転がる巻物を目で追うと、すぐ傍でこっちを見ている太郎次郎と、さらにその先にこっちを見ている従者一同が視界に入った。
人数多いな。
飛竜のトレーナー達もいる。
『ルーシェン……やっぱり続きは夜で』
「夜もたいして変わらないが」
『少しは違います。今日は早く帰ってきてください』
「分かった」
その後は何事も無かったようにルーシェンは書類に目を通し、俺は飛竜達の世話を焼いて過ごした。
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