王太子妃……恐ろしい響きだ

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「ですが、王子ならきっと手に入れられると信じております。各地を巡る行程も素材集めを見越して組んでおりますから」 「さすがフィオネだな」 「あまり安静にさせておくと、いつか、ミサキ様が飛び出していくのではないかと心配なのです。あの方は王子より無鉄砲ですから」  俺は黙って寝室に戻り、ベッドにもぐり込んだ。  今の話、やっぱり俺の話だろうか。  心臓?  発作?  服の隙間から手を入れて、心臓のあたりを撫でる。そこにはファンクラブ男の変態親父に魔法攻撃を受けた胸の傷跡がある。  でも、今は何ともないのに。痛くもないし、心臓が止まりそうになったこともない。だからきっと俺のことじゃないと思いたいのに。  暗い中ぐるぐると考えていると、ルーシェンの足音が聞こえてきて、俺は思わず息を潜めて寝たふりをした。 「シュウヘイ……」  ルーシェンがベッドに膝を付いて、俺の髪を撫でる。目を閉じてされるがままになっていると、ふわりと柔らかいルーシェンの魔法の力に包まれた。隣に横になって体重がかからないように俺を抱きしめてくれる。  体重をかけてもいいのに。体温と重さを感じるのも好きなんだから。それから唇にキスされたから、もう寝たフリが出来なくなって、ルーシェンの深い口づけを受け入れる。 「……すまない。起こしてしまったな」 『帰ってくるの、遅いです』 「シュウヘイにはいつも怒られてばかりだ」 『あまり忙しいと身体を壊します』 「そうだな。気をつけるよ」  ルーシェンはもう一度俺にキスをすると、俺の心臓の傷跡を撫でた。 「シュウヘイ、ずっと俺のそばにいてくれ」 『……もちろん、ずっといます』 「そうか……良かった。おやすみ、シュウヘイ」  すぐに隣で規則正しい寝息を立て始めたルーシェンを見つめながら、もしかして、ルーシェンがここ最近ろくに帰ってこなくて、あまりイチャイチャしていないのは俺の身体を心配してわざとそうしているんだろうか、とそんなことを考えた。
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