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眠れないまま明け方になった。
ベッドの中でルーシェンの寝顔を見つめ、起きたら薬の事をどう聞き出そうか考える。異世界に再び戻ってきた日の夜も、ルーシェンと何もしなくて悶々としていた事を思い出した。
あの頃は、ルーシェンが隣国の姫と婚約するんじゃないかって心配してたよな。そして無駄に怒らせたせいで、パーティーで会うまで部屋に来なかったんだ。
『……ルーシェン』
もう朝だから起こしてもいいかな、と顔に触ってみる。格好いいな。頬のラインとか、目を閉じた表情とか完璧だ。肌に触れていると、ルーシェンが目を覚ました。
覚醒するとすぐにわかる。ルーシェンのキラキラしたオーラがふわりと強くなるからだ。見えるくせに詳しくないけど、意識があるかないかで大きさが変わるし、注意を向けている方に広がる事は何となく分かっていた。そのオーラに包まれてすごく心地いい。
『おはようございます』
「シュウヘイ……」
『昨日は遅かったですね』
ルーシェンが寝起きの表情で俺を抱き寄せ、頭を擦り付けてきた。
「シュウヘイ、日程が決まった」
『新婚旅行ですか⁉︎』
「ああ。あいにく二人きりじゃないが」
『やった!』
ベッドの中で小さくガッツポーズをするとルーシェンが笑った。
「フィオネが言っていたぞ。シュウヘイが毎日退屈していると」
『何したらいいか分からなくて。王太子妃って、もっと忙しいのかと思ってました』
「これから忙しくなる。明日の午後には王都を離れるからな」
『ようやく練習した王太子妃の立ち居振る舞いが発揮できますね。期待しててください』
「……」
『何ですか? その表情』
「いや……期待している」
ルーシェンが楽しそうに笑っているから、なんとなく薬の事を聞きそびれた。フィオネさんに聞けばいいかな。
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