王太子妃……恐ろしい響きだ

14/21
前へ
/264ページ
次へ
 眠れないまま明け方になった。  ベッドの中でルーシェンの寝顔を見つめ、起きたら薬の事をどう聞き出そうか考える。異世界に再び戻ってきた日の夜も、ルーシェンと何もしなくて悶々としていた事を思い出した。  あの頃は、ルーシェンが隣国の姫と婚約するんじゃないかって心配してたよな。そして無駄に怒らせたせいで、パーティーで会うまで部屋に来なかったんだ。 『……ルーシェン』  もう朝だから起こしてもいいかな、と顔に触ってみる。格好いいな。頬のラインとか、目を閉じた表情とか完璧だ。肌に触れていると、ルーシェンが目を覚ました。  覚醒するとすぐにわかる。ルーシェンのキラキラしたオーラがふわりと強くなるからだ。見えるくせに詳しくないけど、意識があるかないかで大きさが変わるし、注意を向けている方に広がる事は何となく分かっていた。そのオーラに包まれてすごく心地いい。 『おはようございます』 「シュウヘイ……」 『昨日は遅かったですね』  ルーシェンが寝起きの表情で俺を抱き寄せ、頭を擦り付けてきた。 「シュウヘイ、日程が決まった」 『新婚旅行ですか⁉︎』 「ああ。あいにく二人きりじゃないが」 『やった!』  ベッドの中で小さくガッツポーズをするとルーシェンが笑った。 「フィオネが言っていたぞ。シュウヘイが毎日退屈していると」 『何したらいいか分からなくて。王太子妃って、もっと忙しいのかと思ってました』 「これから忙しくなる。明日の午後には王都を離れるからな」 『ようやく練習した王太子妃の立ち居振る舞いが発揮できますね。期待しててください』 「……」 『何ですか? その表情』 「いや……期待している」  ルーシェンが楽しそうに笑っているから、なんとなく薬の事を聞きそびれた。フィオネさんに聞けばいいかな。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

523人が本棚に入れています
本棚に追加