王太子妃……恐ろしい響きだ

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 遅い朝食の後、ルーシェンとは別の部屋に行き、何故かいつもより多い侍女に取り囲まれて念入りに着替えと身支度をされる。 『飾りすぎてませんか?』 「ミサキ様、これから部下の方々に挨拶されるのですよ! これでもかと飾り付けて王太子妃の威厳を示さなくては!」 『え? 挨拶?』 「当然です。王子様とミサキ様のご旅行にご一緒する選び抜かれた部下達が待ってますわ。皆さまミサキ様とお会いしたくて今日の日を楽しみにしていたと聞いております」  うっ……。  挨拶か。何も考えてないぞ。  それに、俺に会いたいって多分ただの好奇心だろ。  ファンクラブ襲撃事件以来、王族のプライベートゾーンから出でなくて、会った人といえば異世界担当課のみんなとジョシュくらいだ。多分部下達の中では、俺は誘拐されかけた後で結婚式に乱入して偽新婦を殴り飛ばした平凡な容姿の異世界人っていうイメージしかないはず。忠誠心とかあるはずないと思うんだけど。  ゴテゴテに飾られた後で、ルーシェンと合流するのかと思ったら、ルーシェンは先に下の階に行っているということだった。  仕事人間め。  プロポーズされた時に、本当は王族なんて嫌だとか言っていたけど、ルーシェンは部下も国民も大好きに違いない。少しだけ飛行部隊に嫉妬しそうだ。 『久しぶりですね、下の階に降りるの』 「そうですね」  いつも護衛をしてくれている金髪のお兄さんに聞くと、みんなが集まっているのは16階らしい。ちなみに金髪のお兄さんはもと飛行部隊で、アルマと戦った時に石化した人だ。名前はジョージさん。どこから見ても異世界の人だけど、名前を呼ぶときは勝手に脳内で譲二さんという漢字を当てはめて呼んでる。  
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