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動揺している国王軍の兵士とは対照的に、飛行部隊の三人はルーシェンの周りに集合した。
「治療師を俺の部屋に呼べ」
「かしこまりました」
「王子、ポリム殿をお呼びください。あの方ならミサキ様にお出しする薬を熟知しておられます」
「そうだな、そうしてくれ。マーク、引き続き国王軍を見張れ。ノーラン、お前は命令書を発行した者を調査しろ」
「はいっ」
飛行部隊の部下が全員いなくなると、ルーシェンは俺を抱えたまま広場をあとにした。砦の内部に入ろうとするので、魔法のことを教えようと服を引っ張る。
『ルーシェン……砦には魔法が。外に出ないと』
俺の声が聞こえてるはずなのに、ルーシェンは何も言わず部屋まで歩いて向かう。廊下にいた国王軍の兵士たちは慌てて距離をとり、その場に跪いて顔を伏せた。
『……まだ怒ってますか?』
怒ってるよな。オーラを見ればわかる。無言のまま俺を抱いている腕に力がこもる。
『ごめん。でも、俺は無実で……』
「熱がある。何も言わずに寝てろ」
やっぱりすごく怒ってるよ。婚約破棄でもなんでもすればいいって言ったの、フィオネさんから聞いたのかな。
ルーシェンの部屋の前にフィオネさんが待っていて、そのまま部屋に通された。ベッドに寝かされると冷たい布を額に乗せてもらった。ずっとそばにいて欲しいのに、ルーシェンはベッドを離れてフィオネさんと話してる。
「お薬を用意いたします」
「ポリムを呼んだ。すぐに部屋に来るはずだ」
「護衛はどういたしましょうか」
「国王軍の兵は信用できない。ジョージの謹慎を解くから呼びに行ってくれ」
「かしこまりました」
フィオネさんが出ていくと、しばらくして薬の袋の束を持ったポリムがやって来た。息をきらしてる。ルーシェンへ深々と礼をしてベッドのそばにきてくれた。降格処分って聞いたけど、元気そうで良かった。涙目になってるけど。
「ミサキ様」
『ポリム、すみません』
「せっかくお元気になられて砦に戻ったのに、こんなに熱が。すぐに薬を用意いたします」
『ポリムには迷惑ばかりかけてますね……』
「とんでもありません」
ポリムはルーシェンを気にしてそれ以上何も言わなかった。ポリムの用意してくれた苦い薬を飲んで再び横になる。
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