恋にライバルは不要です

31/45
521人が本棚に入れています
本棚に追加
/264ページ
「王子様、おやすみになられるのでしたら私がミサキ様の看病をいたします」 「いや、あとは俺がみる」 「では隣の部屋で待機しております。いつでもお呼びくださいませ」  ポリムが部屋を出ていくと、ルーシェンと二人っきりだ。ルーシェンは何も言わないし眉間に深い皺が刻まれているのに、そばにいて欲しくて手を出すと、ためらいがちに握ってくれた。 ***  眠っていたらしい。  どのくらい眠っていたかは分からない。たくさん汗をかいて、身体は熱っぽいのにぞくぞくと寒気がした。あまり良くなってない。  暗い部屋にルーシェンがいる。俺と同じベッドには眠らず、隣に座ったままの姿勢で目を閉じて眠っていた。片手は布団の中で俺の手を握ってくれていたみたいだ。 『ルーシェン……』  掠れた声で名前を呼ぶとルーシェンは目を覚ました。 すぐに額に手を乗せられ、ムッとした表情になる。それがおかしくて少し笑ってしまった。 「熱が全然下がっていない。なぜ笑っている」 『ルーシェンが隣にいるのが嬉しくて』 「浮かれるな。死にかけたし高熱もあるんだぞ。おまけにシュウヘイは謹慎処分中だ」 『そうなんですか?』 「当然だ。ロベルトだけ罰を与えるのもおかしいだろう」 『魔法で眠らされて、運ばれただけです』 「服を脱いでいた」 『眠らせた人が脱がしたんです』 「俺以外に肌を見せるなと言っただろう」  意識ないのに無茶いうよな。こういうところは相変わらず王子様なんだよな。 「だいたいシュウヘイは昔から隙がありすぎる。出会った頃からそうだった。初対面の俺に風呂を見張れだとか、部下と雑魚寝をしたいとか、異世界ではそれが普通なのかもしれないが」  ルーシェンがぶつぶつ言ってる。さっきよりは怒りがおさまったみたいだ。熱でぼーっとするし、寒気もするからあまり頭に入らない。 「シュウヘイ……? 大丈夫か」 『寒気がします』  ルーシェンは少し考えて、俺のベッドに潜り込んだ。身体に手を回して暖めてくれる。 『暖かい』 「熱があるのに寒いのか。シュウヘイが魔力酔いをしているから、本当は離れていた方がいいんだが」 『そばにいてください』  そう言うと、ルーシェンはぎゅっと腕に力を込めた。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!