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『ルーシェン……この砦には強い魔法がかかっています。だから、みんな眠ったり、状態異常になったりします』
「見えるのか」
『何度か見えました。あの夜も、ルーシェンの部屋に行ったら、部屋の壁に魔法の文字が見えて……気を失いました』
「誰かがシュウヘイを狙っているのは確かだ。よくない噂も広まっているし、浮島を墜落させたのもシュウヘイのせいだと言われていた。だが命まで狙うとは思っていなかった。俺のせいだ。花粉の被害に気を取られすぎていた」
『誰が狙ったか知ってます。それは、国王軍の……』
駄目だ。やっぱり言葉が出ない。
「国王軍の?」
『言えないんです。何か、変な魔法をかけられました』
「心配するな。今、飛行部隊に調べさせている。朝までには見つかるはずだ。安心して寝てろ」
ルーシェンはそう言ったけど、とても安心なんて出来なかった。エルヴィンは俺の処刑が失敗したと気づいたら、次の手をうってくるはずだ。だけど、熱で頭はまわらないし、ルーシェンの腕の中が心地よくて、ついうとうとしてしまった。
***
強い魔力を感じて目を覚ました。一瞬、エルヴィンの魔法かと思って飛び起きる。隣にルーシェンがいない。どこに行ったんだ? まさかエルヴィンが何かしたのか?
焦っていると、砦にかけられていた重苦しい魔法が消えて、すうっと身体が軽くなる。嘘みたいに楽になった。やっぱりな。みんな魔力酔いって言ってたけど、俺はエルヴィンの魔法のせいじゃないかと思ってたんだ。
「ミサキ様」
ポリムが水を持って部屋に入って来た。
「お目覚めになりましたの?」
『ポリム……』
「顔色が良くなりましたわね。熱も下がられたようで安心しました」
ポリムが俺の熱をはかり、薬の準備をする。
『ルーシェンは? 今、何か魔法が』
「先程、この砦に援軍が到着しましたの。王子様はそのお出迎えで会議室にいらっしゃってますわ。その軍を率いていたのはどなただと思います?」
ポリムの目が輝いてる。有名な人なんだろうか。
『誰ですか?』
「王妃様です!」
王妃様!
頭の中に、龍を従えて散歩していたあのラスボス感漂う女性の姿が浮かんだ。
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