王太子妃……恐ろしい響きだ

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 最初は一人で着替えようと思ったのに、誰かと会うときにはしきたりとしてなんとかの付いた何色の衣装を……といろいろ説明された事が覚えられなくて断念した。以前ルーシェンに着替えは一人でしろと言ったけど、無理だな。 「ミサキ様、聞いていらっしゃいますか?」 『え? は、はい』  あまり聞いてなかった。フィオネさんの眉間に皺がよる。フィオネさんは怖い。ルーシェンよりはるかにスパルタだ。 『今日は出歩くなって事ですよね』 「行動予定では飛竜のトレーナーとの面会のみです」 『いつになったら外出できますか?』 「おそらく、都市に出発するまでは無理かと。それもどうなるか分かりませんが」 『ええ⁉︎ 行けないんですか?』 「それは分かりませんが、訪問する都市は減る可能性が高いですね。時期も未定です」  ショックだ……。  ずっと王宮にいるのも退屈だから、早く新婚旅行に出かけたかったのに。 『何でですか?』  聞かなくても大体わかるけど。 「王子はあなた様の事がご心配なのです」  やっぱり……。  婚約式で襲われて以降、ルーシェンが異常に心配性になった。危険だからと全然外に出してもらえない。  確かに俺は頼りないけど、ずっとこれじゃあ息が詰まるし、各都市は俺たちの訪問を待って準備しているんだから、このままだとルーシェンの王子としての評判が下がるんじゃないだろうか。それは嫌だ。  どうしたら王子が安心してくれるんだろう。 「ミサキ様には魔力がございませんから……」  フィオネさんの一言でひらめいた。 『この国で一番魔力の強い人って誰なんですか? 魔法関連部の部長ですか?』  俺の質問にフィオネさんが眉をひそめる。何か面倒くさいことを言い出すのでは?という顔だが当たってる。  一番魔力の強い人に、弟子入りしようとひらめいたんだ。魔力が無くても、今は道具である程度補強出来るらしいし。それならルーシェンも安心するだろうし。 「この国で一番魔力の強い方は、王妃様です」  お、王妃様か……。  こうして俺の王妃様弟子入り計画がこっそりスタートした。
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