王太子妃……恐ろしい響きだ

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『ジョシュは昔みたいに話していいですよ』 「でもミサキ様、王太子妃だから」 『中身は同じです』 「だってその格好……」  ジョシュに言われて自分の姿を思い出す。頭に銀色の飾りを乗せ、白い服に青いジャケット、白いズボン。銀色のサンダルには宝石がくっついてる。外に出かける時には最低でもこれにマントと腕輪と手袋、それにイヤリングとベルトがくっついてくる。人生でこんなにアクセサリーを身につけた事が無かったから、たまに自分でも鏡を見ると眩しくてびっくりする。 『変ですか?』 「とてもお似合いです」  ジョシュはニヤニヤしてるから本当かどうか分からない。  誰に聞いても似合うとしか言わないから、身分が高いのも考えものだ。正直な感想は如月かフィオネさんか王妃様くらいからしか貰えない。ルーシェンとは対等なのに、ルーシェンも俺が何を着ても似合うとしか言わないから当然参考にはならないし。 『でもジョシュ、婚約式の時はありがとうございました。ジョシュのおかげでこうして幸せにしていられます』  そう言うと、ジョシュは少しだけ涙ぐんだ。 「良かったです。ミサキ様が……幸せそうで」 『ジョシュは幸せですか?彼とは仲良くしてますか?』 「実は別れました」 『ええっ⁉︎』 「彼が僕の出世で拗ねてしまって。警備兵だし会う機会も減ったんで……」 『そうだったんですか……』 「でも今は新しい彼がいます」 『ええっ⁉︎』 「同じ職場なんですよ。僕モテるんで、相手に不自由したことないんです」  そう言ってあははっと笑うジョシュ。さすがだ。こういう所、敵わないな。  ジョシュの仕事の話をひとしきり聞いて、お茶会は終了した。  今日は飛竜のトレーナーとしか会わないと思っていたから、急に決まったお茶会だったのかな。 『フィオネさん、もしかして私のためにジョシュとのお茶会を開いてくれたんですか?』 「ミサキ様の命の恩人なら、王子もお許しくださるでしょう」 『ありがとうございます! フィオネさん』 フィオネさんに飛びつくと、 「ミサキ様、その誰にでも抱きつく癖は改めなくてはなりませんわね」 と真顔で言われてしまった。
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