王太子妃……恐ろしい響きだ

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 ジョシュとお茶会をした後、着替えて王宮の離れに魔方陣で飛ぶ。  フィオネさんは留守番だけど、専属の護衛兵士や従者は必ず俺の後に付いてくる。最初のうちは慣れなかったけど、今では少しだけ平気になった。  離れは王宮から少し離れた場所に浮いている島で、王宮の21階にある魔方陣でしかたどり着けない場所だ。自然や山や水辺のある浮島には飛竜がたくさん暮らしている。  そこで王室御用達の飛竜とそのトレーナー達がズラリと並んで待っていた。 「ミサキ様、お待ちしておりました」  飛竜のトレーナーは独特の赤い衣装を着ている。飛行部隊の青いマントもいいけど、トレーナー達の赤い衣装も格好いい。赤は飛竜の目の色と同じだ。作業着に近い衣装には金色の刺繍が施されている。 『いつもお世話になってます』  そう言うと、トレーナーの中でも最も地位の高いマスターと呼ばれている男性が頭を下げた。かわりに隣にいる女性がにっこり微笑む。 「ミサキ様、私共に敬語はお止めくださいませ。王太子妃様の飛竜をお世話する事が出来てとても光栄に思っておりますのよ」  女性はマスターの娘さんで、俺の飛竜を二頭育ててくれている。 『太郎と次郎は元気ですか?』 「もちろんです。こちらへどうぞ」  太郎と次郎は去年卵から孵ったばかりの飛竜の子供だ。王宮で暮らしはじめてから、ルーシェンがプレゼントしてくれた。何故二頭かというと、子供では人間を長時間乗せられないからという理由と、王族の飛竜はいざという時の為に一人につき必ず複数用意されているらしい。 『太郎! 次郎!』  飼育小屋と呼ぶには豪華すぎる建物に入って呼ぶと、じゃれ合っていた二頭が俺を認識した。バサバサと翼を広げてこちらに飛ぶように駆けて来る。可愛い。大きさは大型犬くらいだ。この間見たときはもっと小さかったのに。飛竜は竜の中では比較的成長スピードが速いらしい。
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