王太子妃……恐ろしい響きだ

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 「元気だったか?」  二頭はグルルグルルと鳴くと、頭を擦り寄せてきた。ひんやりした皮膚にはまだそれほど固くない虹色の鱗が生えている。卵から孵ってしばらくの間俺が餌をやっていたから、餌をくれるいい人間だと認識されているし、こうして触らせてもらえる。 『可愛いなぁ』 「ミサキ様、今日は前回に続いて飛竜とのコミュニケーションについてお教えいたしますね」 『よろしくお願いします』  早く飛行方法を教わりたいけど、太郎も次郎もまだ小さいし、なかなかそうもいかないみたいだ。乗れるのは早くて一年後くらいからで、新婚旅行にはルーシェンの飛竜や他の飛竜に交代で乗せてもらう予定だ。  従者達が見守る中、太郎と次郎の鱗を専用のクリームで磨いたり、餌をあげたり、飛竜の生態について講義を受けたりしているうちに、浮島が騒がしくなった。 「ミサキ様、王子がいらっしゃいました」  護衛兵士に言われて空を見上げると、白い飛竜と二頭の茶色い飛竜が近づいてくるのが見えた。 『視察は終わったんでしょうか』 「ミサキ様にお会いするために立ち寄られたのでしょう」  兵士もトレーナー達もニヤニヤしている。そんなことはっきり言われると恥ずかしいんだが、とにかく俺の護衛兵や従者はすぐに、愛されてますね、だの仲むつまじいですね、なんて事を言ってくる。 『何か他に用があるのかも』  従者達が冷やかすから、人前ではあまりイチャイチャした態度が取れないんだけど、恥ずかしいなんて感情はルーシェンにはないらしい。  浮島の屋敷前に降り立った飛竜から飛び下りると、爽やかな笑顔でこちらに歩いて来た。相変わらずキラキラした金色のオーラだ。まぶしいし、いつ見ても胸がときめく。 『ルーシェン、視察は終わったんですか?』 「シュウヘイが浮島にいると聞いて、時間を作った」 「ミサキ様、仕事を持ってきましたから気にせず飛竜に集中してくださいね」 「アーク、それはどういう意味だ」 「王子、ミサキ様の邪魔しちゃいけませんよ」 「王子の俺が邪魔か」  アークさんとルーシェンのじゃれ合いを眺めて笑い、ルーシェンがずっと俺を好きでいてくれる事に感謝した。
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