王太子妃……恐ろしい響きだ

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 屋外に設置されているテーブルと長椅子にルーシェンが腰掛けると、アークさんが大量の巻物と書類を荷物から取り出してテーブルにどっさりと置いた。あれをわざわざ持ってきたのか。 「王子、今日中にこちらに目を通してくださいね」 「ああ」  アークさんは書類を置くと、俺の飛竜の専属トレーナーさんと一緒に何か話しながら遠くに見える屋敷に歩いて行った。  俺に付いてきた従者達もそそくさと距離を取る。視界に入らない位置まで離れると、俺とルーシェンの近くにいるのはエストと太郎次郎だけになった。ルーシェンの白い飛竜のエストは床の上で、じゃれ合っている太郎と次郎を眺めている。  エストは人間でいうなら若い女の子らしく、太郎と次郎を弟か子供のように扱っているらしい。ほとんどの場合は優しく見守っているけど、たまに二頭のいたずらの度が過ぎると判断した場合、首を咥えて投げ飛ばしたりしっぽでなぎ払ったりする。  竜のじゃれ合い……迫力があっていいな。  ちなみに飛竜も個体によって性格や能力にかなりの差があるらしい。エストは頭が良くて勇敢で能力値が高く、他の飛竜達からももてるらしい。やっぱり白いからか。それとも王子を乗せているからかな。  太郎と次郎は、まだ子供だから何とも言えないけど、太郎は元気いっぱいでちょっと馬鹿、次郎は負けず嫌いで、負けるとすぐに落ち込むタイプみたいだ。どっちも可愛い。  長椅子に座って巻物と書類に目を通すルーシェン。  目を通した後、持っているペンで文字を書き加えたり、巻物に書かれた魔方陣と呪文に微量の魔力を使ったりしてる。  ずっと見ていたいけど邪魔かな。 『何か手伝えることないですか?』 「いや、シュウヘイは勉強の続きをしてくれて構わない」 『そうですか』  量が多そうだから手伝おうと思ったけど、ルーシェンしかチェック出来ない書類なのかもな。邪魔しちゃ悪いから離れようとしたら、止められた。 「何処へ行く」 『邪魔みたいなのであっちで勉強しようかと』 「何のために書類をここへ持ってきたと思っているんだ」 『え? ……気分転換とか?』 「いいから座れ」  隣に座ると、ルーシェンが当然のように腰に手を回してきた。
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