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それは突然の出来事だった。私がいつものように仕事をしていると、家族から会社へ連絡が入った。父が倒れた、と。 私は仕事を抜けて、急いで病院へと駆けつけた。 父は昔気質(かたぎ)で頑固で、大工の棟梁をしていた。何かあるといつも黙ってお風呂を掃除したり日曜大工を始めたり、黙々と一人で作業する人だった。また病院嫌いな父は、怪我をしてもじっと我慢して自然に治癒するのを待っているような人であった。だからいつも生傷が絶えなかった。 今は引退して、隠居生活を送っている。そんな父が倒れたというのだ。 病院の先生からは、「今はまだ話せる状態ではありますが、もう先は長くはないので心積りしておいてください」と言われた。 母は少し取り乱していて、今にも倒れそうな有り様だ。 「私がお父さんの介護するから。私が側についているから、安心して」 そう言って嘆き悲しむ母を説得した。
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