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それからは会社と病院への往復が続いた。時には早退することもしばしばあった。それでも上司は、「心配だから、早く帰りなね」と私を励ましてくれた。
そんな日々が続き三ヶ月程経った頃、父は旅立った。たくさんの思い出、たくさんの心胸を残して。
いっぱい泣いた。いっぱい悲しんだ。きちんとお別れ出来た。きっともう、大丈夫。
煙突から出ていく白い煙が、夕焼け色に染まるオレンジの空に溶け、地平線の彼方へとどこまでも続いていた。
無事に葬儀を終え一週間後、私は再び仕事に戻った。いや、戻ることが出来た。
「また、よろしくお願いします」
上司は優しく微笑して、「じゃあ、この仕事よろしくね」とクリアファイルを取り出し、いつもの調子で答えた。
「はい!」
この何気ない日常に感謝した。
私はもう一度、ちゃんとこの仕事を始めようと思う。この上司のいる下で、しっかりと。またここから始めようと心に決めた。
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