明日も

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明日も

 佳那は由菜にそう断言した。 「明日も明後日も勝って、インターハイ行って、優勝しよう。最後の最後まで試合を楽しんで勝とう」  力強い言葉と、優しく由菜の手を握る佳那。 「大人になって、カフェで思い出話にできるくらい楽しもう、明日も明後日も」 「......うん、」 「もちろん!」  2人は拳を軽く合わせてから、バッグを持って、コートの外に出た。  --2021年夏、佳那は有明アリーナのオレンジコートを前に両手を合わせながら、試合を集中して観ていた。  JAPANと書かれたユニフォームを着て、今まさにボールをセッティングしようとしているのは、かつてのチームメイトだった。  由菜は日本代表に選ばれ、今コートのなかで躍動している。海外遠征で積み上げてきた経験、それまで以上の練習を重ね、由菜はこのオレンジコートに立っていた。  試合の前日、筆不精の由菜から佳那にメールが入っていた。 『いつも思い出すのは、インハイ予選初日のあのトス。  あれを思い出すだけで、最高のトスが上げられる。  ありがとう、佳那。  インハイは途中でまけちゃったけど、明日からから』  強い気持ちが感じるメールに、佳那はどう返信するか悩んだ挙げ句、一言だけ送った。 『勝とう。私も応援してるから』  目の前コートの試合は、攻防が繰り広げられていた。相手チームからの鋭いスパイクを日本のリベロがキレイに上げる。  上げられた球は、由菜の元にキレイに届けられた。由菜の強い意思を受けたその球は、ライトに素早く振られる。  ライトにはエース選手が踏み切り、ブロック3枚との勝負に出た。そこに届けられた球は、エースの手にしっかりと届き、そして、ブロックの手に叩きつけられた。  球は相手コートに叩きつけられた時よりも力無く、コートに落ちた。  ピピー  試合終了の笛がコートに鳴り響いた。  佳那は席をたち、拍手をしながら、あらかじめ用意していたスケッチブックを掲げた。 『ナイストス、由菜』  佳那の掲げたスケッチブックを見つけた由菜ははにかんだように笑いながら、拳を掲げた。 完
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